「TWO OF US」ってありえますか?
小嶋 洋輔

・・・第1回・・・


送信者 lxxxxx@xxx.xx.ne.jp
件名 お久しぶり。驚かないでください。
受信日時 200×年3月12日 AM2:56


おことわり

 これから、僕はあなたに送るメールの中に、こうして「小説」を送っていきたいと考えている。日常の中に異常が侵入する、こういった形をとる事で「新しい小説像」が浮かんでくれば幸福だとも考えている。「メール連載」という形も面白い。
 そうなると、あなたに対して「断り書き」が必要だ。なぜなら、この小説は一人の青年の独白の手記であるのだが、その内容には少なからず、現実に存在するあなたが登場するのだから。
 まず第一に認識してもらいたいのが、この文章があくまで小説であること、「一人の青年の日常的に、これといった筋もなく、一人の女性を思って断続的に書いた手記」だということだ。それ以上に深読みする必要も、それ以下に考えることも、無意味な作業でしかないのである。ただ、普通に本屋で売られている「小説」と異なるのは、自分と思える人物が登場すること、しかもほぼ「ヒロイン」という形であらわれるということである。だが、その差は、あなたが本屋で買ってきた小説、もしくは僕が貸した小説を読んで、普通に感じる「このひとって、わたしみたい。」という感覚が、強くあらわれるといったものでしかないだろう。今まで作品のモデルになったことがないので断定は出来ないが、多分そんなものだと思う。それに、事実を事実のまま描く、いわゆる日本伝統の「私小説」とも違う。フィクションも多分に含まれるのだから。
 主人公が思う相手であるあなた(つまりモデルとして)がこの小説を読む、という現象は、非常に興味深いし、現実にどのように影響していくのかもまるで想像がつかない。それに、まるで他人事のように書いてきた作者である僕であるのだが、結局はやはり主人公のモデルなわけで、正直滑稽なほど様々な面で(つまり二人にとってプラスどころかマイナスになることなのではないか?自分の首を絞めているだけなのではないか? 自分が、自分の思いが正面に出すぎてしまうのではないか?)不安である。この鬱陶しい論文口調はその「不安」のあらわれだと考えてほしい。
ただ好奇心も強まっていくのはやはり事実だ。例えば、もしあなたがこの小説に対して何か返事を送ってきたらどうなるのだろう。つまりこの小説の発表の場は一般にはコミュニケーションの場として活用されるメール上なわけだから、その返事をペーストで引用してはっつけて、生の声をそのまま利用も出来る。これはもちろん許可を得られればではあるが。
 他にも考えていることはあるのだが、あなたに下手に先入観を与えても悪影響だと思うので一つだけにしておく。
 小説内での現実と虚構の交錯。現実にさえ影響を与えてしまう小説。そして作家個人の一人よがりを逃れられるかもしれないということ。何て素晴らしいことだろう。僕が切望する「新しい小説像」が、この行為の先には見えてくる、そんな可能性すら感じてしまう。
「小説」が進化するのだ。この国では誰も成し得なかった仕事を自分が行えるかもしれない。しかも処女作で。
 何だかだらだらと書いてきてしまった。ここまで読んであなたは「論理」の押し付けだと感じてしまったかもしれない。それだけ興奮して自分勝手なことをいっているのを、僕自身素直に認める。だけれど、長い付き合いの好でこの「文学馬鹿」に力を貸してもらえないだろうか。
 当然のことだが、この「小説」は許可なしでは絶対に公表しないので、その点では安心してもらいたい。
 信じてくださいよ。

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 「TWO OF US」って ありえますか?

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