
★フリーという生活
●その、生活の基盤という点において、フリーだとどの辺がやっぱ一番不安ですかね?その、家庭的なものは置いておいて…なんだろう、その社会生活というか、その税金とかそういった関係で。
○ああ、高いよね。いままではずーっと社会人になってから自動的に給料から引かれてたから、額面よりずいぶん引かれてるなぐらいにしか思わなかった。厳密に引かれたものの重さっていうのはあんまりわかんなかったけど。やっぱり何割か持ってくれたりとかするじゃない?会社に所属してると。それが全額自分になって、逆にちょっと高くなるから、毎月毎月なんでこんなにっていうのはあるけど。仕事さえ入っていればギャラは会社勤めの時よりは良いから…その分、だから税金だの保険料だの束になった分仕事すればいいかなって気はするけど。
●平野さん御自身の性格にあんまり博打打ち的な素養は、毛色はないですよね。
○あんまりないよね。割と。ていうか、ま、そういう表面的な博打打ち的っていうか全体的に生き方自体は堅いかもしんない。
●採算は目処が立ってフリーに…
○いや、フリーになったときはまったく目処は立ってなかったから。しばらくしてからなんとなく…
●じゃけっこうな博打なんじゃないんすか?
○いやー…ま、博打っちゃー博打だったかね。(笑)ひょっとして今のその仕事が入ってなかったら、たぶん3月ぐらいまでなんにも…ま、なんにもっていうことはないけど。今月、今のスタジオでやってるやつ入ってなかったら、別にもう一個やってるんだけど、それでも月に5万ぐらいしか稼げないから(笑)もうかなりね、どうすんだよみたいな(笑)
●保険と税金で終わっちゃう(笑)
○終わっちゃうんじゃないかっていう話だよね。いやーほんと仕事入ってよかったよ(笑)。助かってますよ。それも3月で終わっちゃうからさ。その後また探さなきゃなんない。
●いやそうすると自分で自分の生活プロデュースしなきゃなんないですよね。プロデューサーも自分でやんなきゃなんないっていうのは…新しい仕事が一つ加わりましたよね。そしたら。
○今んとこでも、知り合いの中の仕事だから。知ってる人んとこたまに顔出して「なんかないっすかー」みたいな中でもらってるから。そういうのがなくなったときじゃない大変になるのは。それもなくなったらまったく知らない人からもらわなきゃならなくなるわけだから。
●フリーになってからの生活の変化ってなんかあります?
○人と飲む回数が増えた。極端に増えた。
●極端に増えました。倍ぐらいですか?
○倍以上(笑)今までだったらめんどくさいからいいよ断っちゃえっていうのが、なんか自分のほうから誘ったりとかして。「飲みませんか?」ぐらいな勢いで。「どうしたんだよ急に」みたいなこと言われて。「ちょっと話があって」って。下心丸出し。「なんかないすか?」みたいな(笑)
●はーなかなか…でもなんとなくそういう感じでいけそうな?
○わからん。とりあえずは。3月まではいけるんだけどその後は。
★今後の制作展望
●じゃ話は変わって。今後どういう作品を撮りたいですか?和製ブニュエル。変態平野と呼ばれるようなとか。
○変態路線で行くと反対するやつがいるからな…でも、俺ちょっとフィクションには抵抗があるんだよね。
●平野さんの口からフィクションってあんまり聞かないですよね。
○そうだねー。嫌いってわけじゃないけど、フィクションってね下手に関わるとなんかアマチュア学生自主映画チックになっちゃいそうな気がしてね。それがすごく抵抗がある。
勿論初めはそうでもやってるうちにどんどん洗練されてくるんだろうけど。なんか自分の中でフィクションっていうと…で、特にお金もなかったり制作費もなかったりすると、役者とか知り合いで済まして可能な範囲でっていうのがあるじゃん。別にそれはそれでその中で面白いものとかできると思うんだけど、撮り方次第で。
なんか自分の先入観で、下手するとすっげーダサいもの作っちゃうような気がしちゃって。なんかドキュメンタリーとかって多少荒っぽくても、やっぱり力のあるものってあるでしょ?そういう先入観強くて…だからもっと職業的に徹底してフィクションでやってこうみたいな心構えがあって、助監督とかずっとやってきた中でフィクションに進めば、もう基礎がある中で、いわゆるなんかアカデミックな作り方をしなくても職業的な基礎を踏まえつつそん中で壊していく分には全然いいと思うんだけど…でもそういう下地がない中で、自分はそんな徒弟制度に囚われずに斬新な映像作るんだって意気込みだけでやると外しそうな気がして、自分は。一般論じゃなくて、自分として。すごい外しそうな気がしちゃうんだよね。そこがちょっと怖い。
もし自分も参加するんだったら、ちゃんとシナリオ立てて、ある程度役割分担しちゃって、割り切ってカメラはカメラでプロの人に頼んで、自分はストーリーを作る方に…だからフィクションのシナリオを書くことに関しては…いや、書いてないけど(笑)…書くことに関しては全然ためらいはない。シナリオライターとしては全然ためらいがないんだけど。それをやっぱり監督するとなると…結局そういう自主制作の監督イコールプロデュースも兼務するわけじゃん。自分で。お金だれも出してくれないわけだから。ま、出してくれる人を探すにしてもさ、自分でお金のやり繰りもしなきゃいけなくて…そうなっちゃうと、結局みんなそれができないと自分で全部でやることになるじゃん、監督から撮影からってなっちゃうでしょ。そうするとやっぱり学生の自主制作の枠を出なくなっちゃうかなーっていうのがあって。
だから、シナリオ書いて、それを誰かがどっかそういうことに精通している人のところにお金を集めて…いざ、監督が見つからないっていう段になって自分がやるとかっていうんだったらまた違うけどね。ある程度フィクションって周り固めないと、相当…ま、最近はね、そういう自分一人でドキュメンタリー的な作り方する人とかもいるから、必ずしもスタッフ固めればいいっていうもんでもないと思うんだけど。
役者一つ取ったってやっぱり素人でもいい演技する人もいるだろうけどさ、ほんとのド素人とか使っちゃうとさ、だいなしっていう感じがしちゃうからさ。折角ストーリーが良くてもねっていうのがあるから。そういう意味でなんとなくフィクションって打算的なところがあると…
●自分で監督してみようって気持ちはあまりないんですか?
○監督は…ディレクターとかじゃなくいわゆる監督は、俺絶対向いてないと思うからね。あれ向き不向きあるし。肌と。いわゆる親方とか、そういうのあるじゃん。
●じゃやっぱりシナリオのほうなんですね?小説に手を付けてみようっていう気持ちはないんですか?
○小説を書く能力はないとは思うけど、レベルっていう点でね。まだ小説を書くよりは劇映画っていうかフィクションのシナリオの方がなんとなく自分としてはっていう気もあるから…その延長線上にもうちょっと日本語力を身につけてノベライズするかわかんないけど、小説とかを(笑)なんかね。
別に活字がいいとか映像がいいとかってわけじゃないんだけど、ま、ドキュメンタリーはドキュメンタリーで多分…自分ではねドキュメンタリーの仕事に関しては、ま、向いてるか向いてないかはわかんないけど、映画監督の適正よりはまだなんとなくちょっとぐらいはあるかなーっていう気がするから、それはやってきたいと思うけど、その一方でフィクションの方でもシナリオ書けたらいいなーと。
★人生とは何ぞや
●ではなんか最後にご自分の人生について
○人生って何?(笑)
●人生ってねぇ(笑)
○好きなことってやっぱ一番大事だから、そういうのをやることによってなんか失っちゃうとかあるじゃん。それは見方によっては臆病だと、思う。好きなんだったらそれやればいいじゃんみたいな、あると思うんだけど。自分は割とそういうちょっと臆病な人間っていうかね、とこがちょっとあるから、それはそれで。僕ははっきり言って、2番目でけっこうでございますっみたいなさ(笑)割とそういう生き方が今まで通してあるんですよ。
いや1番じゃなくて2番でも3番でも、なんかどっぷりはまんのがちょっと怖いっていうところがあって。それは良くないことなんだろうなとたまに思うけど…まぁでもよくないと思いつつきっとこの先もそうなんだろうなっていう気はする。
●やっちゃうんだなって
○ずっと。この先。
●でも、どこかの時点でそれ直そうと思った時あります?
○いやないんだよ。それがねぇ。
●これはもうしょうがないと?
○これはもうもうしょうがないと。直そうと思ったことないんだよね。周りを見てて、周りの人はもう本当に一番を突き詰めようってタイプけっこういたから、そういうのを見てたら途中で「あ、直さなきゃ」って思うかもしんないんだけど。逆に俺はその人に「2番がいいよ」って言いたくなっちゃうような(笑)。だから自分の中ではある程度確立されちゃってて。なんか、そんな張り切んなよって(笑)まー、別にさ。どっちがいいのか知らないけど。そういうのがあるからあんま今までで、ないかな?
●あー…
○どっちがいいのかなって疑問に思うことはあったけれど。いかん、直さなきゃ、自分を変えなきゃっていうのはないね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
インタビュアーと平野氏は映画学校の最終課題で同じ組でドキュメンタリー映画を製作した。映画の字幕製作を追ったドキュメンタリーだ。その際字幕制作の現場というものを初めて訪れたわけだが、こういってはなんだが、想像したとおりに、地味で日の当たらないながらも、職人気質の気のいいおじいさんとおばあさんがこつこつと、少しずつ、入ってくる翻訳にあわせ、映画の文字を書き続けていた。その下に函館から月一回通うお弟子さんがいた。お弟子さんが来るのに合わせ撮影に出かけ、いろいろと質問を重ねていた。その折、字幕制作のようなな日の目を見ない職業をなぜやろうとしているのかと訊ねてみたところ「私は、例えば、料理を作る際でも、野菜切ったりとか、食器洗ったりとか、そういうことが好きなんです。だから字幕制作というのは自分の性格に似合っているのかもしれません」と答えてくれた。
映像制作者、しかもディレクターとなれば、欲求が強くがつがつして強引で、けれど目立つ存在、そんなイメージがある。が、平野氏はそういった派手な現場で、まるで字幕製作者のように彼の性格にあわせ立ち振る舞う。「2番でいいよ」と囁く彼が今後どういった活躍をするのか興味が尽きない。
ー完ー
|