Still life 01:
夏休み気分も抜けきらない10月の昼下がり、「『まことクラブ』が新厚前でパフォーマンスをする」という情報を聞いた僕は昼飯を早めに済ませ、胸ときめかせて新厚前に向かった。そこではえんじ色のジャージを身にまとった謎の集団がダンスを踊っていた。一種ノスタルジックなそのコスチュームとは裏腹かっこいいダンスだった。情報をくれた人と彼らの後に付いて行くと生協会館の屋上で写真撮影会を始めてしまった。なんなんだろうこの人たちは……そう思った僕は、そのとき配られていた『劇団上田』の公演「御好意」を観に行くことにした。何かわかるかもしれないそんな期待を抱きながら。しかし、ストーリーは複雑に入り乱れていて未熟者の僕には、あまりよく分からなかった……っていうか全然分からなかった。携帯ストラップに劇団上田の缶バッジを付けてみたけどやっぱり分からない。分からないのに虜になっしまったようだ。そうだ、分からないなら聞いてみよう、白いYシャツに黒いタイツのオニイサンオネエサンに。

2002/11/28(THU)21:30- 晴れ @ガスト西千葉
劇団上田
卍:江戸川卍丸
も:荻原もみぢ
花:花小路男D
インタビューアー
樫:樫田壮一郎(アートパブリシティー)
大:大森章弘(劇団上田のビデオカメラマン)
■上田が生まれた理由
樫:劇団上田は誰が創めたんですか?
卍:僕(江戸川卍丸)と地獄谷です。最初は遊びだったです
花:劇団ノニーっていう千葉大のサークルで、年に3回公演をやってて…。間の開いたときに、暇だから面白そうだしってことでいろいろ集まって
卍:2000年2月。忘れもしない
花:総合校舎の中庭で夜中の7時ぐらいからやり始めて極寒のなかで…
卍:2時間くらいのシナリオだったのに随分超えとったな
花:そっから発端で、同じ年の5月に図書館の大階段を使ってやって、その年の7月に発足
樫:メンバー集めはどういう風にしてやったんですか?
卍:サークルの仲良しを集めた感じですよ
花:劇団上田、今9人いるんだけど9人中8人は劇団ノニーに所属してた人だから
樫:まことクラブとはどういう関係にあるんですか?
卍:僕が入ってるだけ。上田とは何ら関係もない。ただ普通に仲良しなだけっつうことで
花:僕らもチョコチョコ面識があるぐらいで
卍:それを説明すると・・・「極上??????」っていう公演をやったんですけど、それをまこと部長が観に来てて痛く感動され、ちょうどその頃に「まことクラブ」発足し、「んじゃ入れてよ」って勢いで言ったら入れて貰えちゃったって感じ。たいした噺じゃない。まこと部長っていうのはプロのダンサーとしてやっておられる方。まことクラブのメンバーっていうのは結構みんな本職ダンサーの人たちです
樫:新厚前で小豆色のジャージ着てやってたパフォーマンスは?
卍:まことクラブ。上田が勝手に便乗してた
も:人がいっぱい集まってるところにチラシいっぱい配ったの
樫:なぜ新厚前でやろうと考えたんですか?
卍:まことクラブの部員の半数は千葉大なんっすよ。もともとダンサーだった人が一人いてその人の復活をする場だったんですよ。それで「僕が復活するんだったら思い出の地、新厚で」って噺からあそこでやったんだけど。意味わかった?
樫:復活ってどういう意味ですか?
卍:ダンサーとしては一回やめて製作者としてやってらっしゃる先輩がいらっしゃるんですけど、その人が「ダンサーとして返り咲くなら思い出の地、新厚前で」ということで、んじゃ新厚前でやりゃいいじゃんってことでしたんですけど、たいした理由は無いっす

■分からないんです
も:樫田君は劇団上田を観た事ありますか?
樫:「御好意」は浅草の方です。最終公演を観させてもらいました
花:遠いところをわざわざ
も:ありがとう
花:どうでしたか?
樫:いやー、よく分かんなかったです。現在と過去、現在と過去、って入り乱れてるじゃないですか。はー……
大:ホワーって感じ?
樫:ホワーって……
花:あれは再演なのね。サークルのときに1回やってるの。2年生の時、冬の公演で同じく地獄谷さんが書いてやってるんだけど、そん時はもっと分かりづらいお芝居だったのね
卍:分かりづらいじゃなくて分からない
花:っていうか分かるわけが無い
卍:やってた人もよくわかんなかった
花:んでそれが修正されて、まぁ多少分かりやすくなった

■目指すは上↑
大:上田はなぜ「ウエダ」なのかを聞きたい
卍:簡単ですよ。目指すは「上」だから
大&樫:ヘー
花:…。たぶんそれ嘘やね(笑)
卍:目指すは上だから「上だー↑」。「上だー↑」じゃ可笑しいから、「上田→」
花:本当のことは話さないの?
も:そんなに面白い理由じゃないよね
卍:中庭で雪の中やった最初のやつ。あの時の演出家が長野県上田市出身の、上田ロンリーさんっていう人だったんですよ、だから
花:結局、上田ロンリーはその1回きりだったんだけど、名前だけ残った。よく聞かれるけどね。「何で上田なの?」って
卍:いいじゃない「目指すは上だから」で
も:そう答えておくか

■劇団で食べていくということ
樫:これから上田の活動をやっていきますが劇団で食っていくんですか?
卍:それはインポッシブルだと思うんですよ。大体、劇団だけで食っていける人たちっていうのは「劇団四季」と「宝塚」しかいない。劇団でもやるけど他でも何かに出演している。劇団で食っていけたら最高ですけどね。目指すはそれですけどね。上だー!
花:結構有名な劇団でも、バイトしてたり副業してたり…。劇団が大きくなってくると、別の劇団の話が来たり、TVの話が来たりとか。そういうののうちの一つに劇団があるっていう感じじゃないと食っていけない。劇団だとやる場所だとかでいろんなところにお金がかかるから。収支をプラスにするのが大変。身1つじゃどうにもならんし
卍:きびしーっす

■会社勤めしてる人を見て
樫:普通に就職して会社勤めしてる人とかを見てどう思いますか?
卍:やりたくてやってる人とやりたくなくてやってる人おるよね
樫:やりたくなくての方は?
卍:それはそれでいいと思いますよ
花:やりたくなくてやってる人も他にやりたいことがあるけどしかたなくやってるって人と、他にやりたいことが無くてとりあえず就職してる人とがおるやん。やりたいことがあるんならやった方がいいしもったいないと思うんだよね。私なんか大学に入ってから芝居を始めたし、それまでは全然芝居やるなんて考えてなかったから。芝居と出会ったから芝居なんだけど。結局何とも出会わずにそのままなんとなく就職する人もいるわけだし。だからそれはもう仕方が無いとは思うんだよね。その人がそれまでどういう人生を歩んできたかによるのね。別にどうとも思わないよね。それはそれだと思うし
卍:それは立派ですよ
も:だって働いてるんだもん
卍:うらやましい限りだよね。逆にそれができない人たちだから。エライ!やりたいことがあるならやった方がいい。後悔したくないからね。すごい嫌いなんですよ。「あーやっときゃよかった」とか

■これからの活動について
卍:僕の最終目標はハリウッドスター
も:とりあえず近いとこにあるのは月九主演。目指すは深津絵里。最終目標は考えてない。打倒、ふかっちゃん。あ。ごめん、間違えた。朝の連ドラだった。こないだ応募したんだけどねぇ。認められなかった。仮面ライダーも落ちた
卍:仮面ライダーの映画にも応募したの
も:落ちるような写真だった?
卍:サングラスかけて撮ったやつ送っちゃったからさ
花:目に付きすぎて排除されたのかもな
も:やる気あったのにな…
花:最終目標ってなんだろう…?TVに出たいとか映画に出たいとかはそんなに思わない。どっちかっというと舞台の方に興味あるし。舞台でやれるとこまでやってみたい。将来的な展望としては、そりゃ食えたらいいなっていうのが漠然とあるくらい。将来の展望なんて、聞かれたときには考えるけど、やってるときには考えてない
も:今やっていることをちゃんとやらないと、次が無いから
花:劇団大きくしたいっ!てのはあるけど。今が楽しいからやってる。そんな感じです
卍:答えとしちゃ『かんがえてない』
花:運の要素がかかってくると思うのよね。いつ誰が観てくれたとか、誰かと知り合えたとか。そういうことで大きく変わっていくことはあると思うから
も:続けていくことをまず…
卍:続けていけるかどうかも分かんないよ。誰かが「イヤダー!」ってなるかも知れんし「イヤダー就職スルー!」
花:そういう人が出てもおかしくないよね
卍:僕今おもちゃ屋さんに就職したいんだけど
も:おもちゃに囲まれたいんでしょ

■演劇について
樫:今まで多くのパフォーマンスを観てきたと思うのですが、印象に残ったものはありましたか?
卍:あんまり覚えてないな。僕、そういうの観に行ったら基本的に寝るの。多分観に行った演劇の半分以上は寝てるもんね
も:何度もお金を無駄にしてる
卍:高い金払っても寝る。今、劇団界を騒がせているある1つの劇団があるんだよ「髭太夫」。僕は大好き!あと、僕がこないだスペインで見てきたダンスみたいな芝居みたいなパフォーマンスみたいなやつあれはすごい面白かった。すごいパンチが効いてて、5人くらいでスイカをブワーって食ってブワーって種吐いておっぱいとか出したり。2回観に行って、一人すごい可愛い人がいたのね。2回目に赤いバラの花を一本買って、カーテンコールのときに、ダーって走っていってスッて渡してきた。まぁ旅の恥はなんとやら…
花:僕はね、余り良く分かんない。自分が芝居をやってるくせに、他の人がやってるお芝居には興味が無いの。観には行くよ。観てみたいなっていう興味も湧くことはあるんだけど…。多く観たことがないんで、特に印象に残ったのとかはあまりないね。寝ちゃうこともあるし。舞台って結構単価が高いから、そんだけの金を払う価値のあった芝居にめぐり合ったことがないし。そのときは面白いんだけど、「まあ面白かったね」っていう程度。絶賛っていうものに出会ったことがないね・・・出会えば変わるのかなぁ?自分達の芝居に関しても終わってしまったらもう興味がない。ビデオも観ないし。反省とかで観た方がいいんだろうけど。最近それがダメなことに気がつき出して「いけないな」と思いはしているんだけど、基本的なスタイルは変わらない気がするな。観たところで変わらない気がするんだよね。面白いなっていうのがあればそういうのを取り入れてみたりとかはするかもしれないけど、今までの中でそういうのはないから。
卍:劇団上田みんなが好きなのがあるんだけど……。「惑星ピスタチオ」。関西出身の劇団でもう解散しちゃったんだけど、ビデオで観たやつは面白かった
花:全部体でやるんだよね。広いスペースを使って小道具大道具全然用意しないのね。全部自分達の体と音と光だけですべてを表現する感じ。で、何にも囚われないから、普通の芝居だったら表現できないようなこともやれる。例えば『宇宙で戦闘機に乗って戦うシーン』とかリアルにやろうとすると無理じゃない。TVならまだしも舞台じゃ。でもそれを体で表現しちゃうのね。しかもそれを見てこっちも分かるの。「今こういうことやってるんだなー」って。そういう全部体でやるのが面白いのね。始めて観たときは凄いと思ったね。後は「劇団☆新感線」。新感線も体が良く動くけど、ちゃんとセットも造れば小道具も使って……
卍:お芝居っぽいお芝居
花:最近見てないけど、好きだからね
卍:最近好みが偏ってきたんですよ。簡単なやつしか面白くない
大:深い表現とかじゃなくって一発芸みたいなやつでしょ?
卍:何も考えずにボケーっと観て、「あー面白かった」って思えるようなやつ。最近はそんなんしか観てないね

■演じることによって何かを伝えたいことは?
卍:何も考えてないもん。伝えたいことなんか無いし、ただ観てくれた人が面白かったって言ってくれれば良いし、自分としても納得行くものを創りたいし
大:一番難しい所じゃない?
卍:楽しんでくれても、自分の納得が行ってない時とか。今までの公演全部そうなんだけど。
花:反応っていうのは結局他の人のものだから。自分達のものと他の人の観たものは、別に分かれるものなのかもしれない。それを合致させようとしてるんだけどね。メッセージ性って持たされても分からないしなぁ
も:もし伝えたいことがあったとしても、台本には持ち込めないよね。だから、伝えたいなら一人で表現するしか無いじゃない。別に伝えたくてやってる訳じゃあ無い。楽しいからやってるだけ
大:仕事を好きでやるか嫌でやるか、趣味をどうするかってとこに関わってくるよね。仕事でやるっていうのは、相手に対してやってお金をもらうっていうことでしょ。趣味っていうのは自分が楽しければ良い。そこで趣味が仕事になれば良いなって思うけど、そうすると相手を意識してやらなくちゃいけなくなる。そこが難しいとこだよね
花:僕らはお金取ってるしね。お金を取って人に観せる以上は自分達だけの範疇に納まりきらないものだから
も:満足してもらわないといけないし……
花:2000円頂いたら2000円の分お観せします。そういうもんだからね。でも、結局自分達ありきだから。自分達がやるものと、人が観るものの重点の置き方の違いだけで。自分達寄りなのか、観る人寄りなのか。結局、自分達が楽しいからやる、楽しくなきゃやらないし…
卍:やる意味がわからない(笑)
大:そこってエンターテイメントの核心じゃない?自分が楽しくやってることが、自然と相手を楽しませるっていう。そこがエンターテイメントになってる気がする。自分が好きでやってれば、周りもそのうちついてくるんじゃん?
卍:良いことしてたらな(笑)
も:内容によるけど(笑)
卍:好きでやってても付いてこないことは多々あるし
も:そんな劇団が山ほどありますけど

■最後に一言お願いします。
大:そろそろビデオカメラのバッテリー切れちゃうよ
樫:それでは最後に、何かをやろうと志してる千葉大生に一言お願いします
卍:僕?んーっと……

別に分からなくっても良い。分かるとか分からないとか、そんなことよりも、好きとか楽しいとか。そういうことの方が大事なんだということを改めて教えてくれた。自分が楽しいと思ったり、やりたいと思ったことは、躊躇せずに思い切ってやれば良い。「やりたいことがあるならやった方がいい。後悔したくないからね。」江戸川卍丸氏の言葉が印象的だった。