014
2001/11/21 wed, 00:25:02
電話にでんわ。
小嶋洋輔
え、だからさ、うん。いや違うちがう。そうじゃなくてさ、何だろういい言葉がでてこねえな。だから、俺がいいたいのはね。この先が、え? いや、だからそうじゃないって。なんでわかってくれねえかな。「結論は何?」って、それはちょっといそぎすぎじゃねえの。けつろんけつろんっていっちゃったら、なんか、これまでのことがぜんぶなんかうそっぽくなっちゃうじゃん。勝手にしてはいいすぎでしょ。確かに話があるって言ったのは俺のほうだけど、やっぱり、俺には俺のペースってもんがあるわけで。ここはゆっくりいきたいわけ。うん。・・・うん。だからはやまんなっつうの。何で? そっちの方に話を持っていきたいわけ? なんなの、そういった考えが出てくるってことは、お前はずっとそんなことを考えていたってことなんだろ? おかしくねえ? はやとちりにもほどがあるでしょ。 お前が潜在的な無意識にさあ、フロイトが言うところのそういう欲望があるってことなんじゃねえの。え? また難しい、カタカナの名前が出てきたって? 「いつもこうだよ」って何がだよ。だってフロイトぐらいは基本だろ? ラカンって言わないだけ良いじゃん。え? だからラカンていうのはフロイトの弟子で、時間を決めないで精神分析を行った人なんだよ。そんなことはきいてないって、おまえが「なによ、それ。」っていったんじゃねえかよ。だから、俺がこうしてわかりやすく説明してやろうっていうのに、もしもし、もしもし、おい、なんでだまってんの、なあ、おい、おーい。もしもーし。何だよいるならしゃべれよ。あっ! おまえいま「ばか」っていった? 何で俺が馬鹿になるわけ、何もしてないじゃん。どっちかっていうとお前が勝手に早とちりしてそういう風にわめくから、フロイトやらラカンまで飛び出してきちまったんだろうが。「そういうとこ馴染めない」ってお前一体何年付き合ってるつもりなの? 二年だよ二年。二年っていったら生まれたての赤ん坊が二歳になる時間だよ。話もできちゃうよ。最初の半年ぐらいで気づかなかったわけ? 今更「馴染めない」なんて「ツーン」とされても説得力ねえよ。「私、説得力なんていらないもん」って、何? 今ちょっと可愛く言ってみたわけ? かわいかねえよ。バーカ。・・・・。おい、もしもし、もしもーし。「ずるっ」て、泣いちゃってるわけ? ごめん。・・・ごめんなさい。言い過ぎた。だってお前が人の話聞かないで勝手に話し進めるからだろ。愛してるよ。ごめん。なあ、ごめんって。あーいしてーるよ。なあってば。なに? いまぼそって何言った? 「何でもない」って、それはお前、何かいったってことだよな? 何いったの? 怒らないからいってみ。いってみって。「やだ」じゃねえよ。なあ、何ていったの? なに「このむしんけい、うすらとんかち」っていったんだろ? 「そんなこと、いってない」ってじゃあいわなきゃこれを答えに認定します。なあ、なんていったの? え? 「もうおわりだね」っておまえ、なにいってんの、ばかじゃねえの? 「ばかじゃないもん」って、いや、おまえつっかかってくるのはそこじゃねえだろ。終らないって。二年だよ二年。俺らが一緒にいた時間。赤ちゃんがしゃべれるようになるんだよ。ごめんって。何が悪かった? 何で喧嘩始まったんだっけ? 「カタカナの名前」って。そこじゃねえだろ? そこじゃねえと思うなあ。俺は。もう少し前だと思うなあ。「しってるんなら、きかないでよ」って、なあちがうんだって。それは「知る―聞く」の関係なんだって、俺が目指しているのは「教えるー学ぶ」の関係で・・・。ごめん。むずかしかったね。ああおれはだめなやつだね。ごめんね。ごめんね。・・・・・・・・
リフレイン。
「巻戻し」て「再生」。
013
2001/11/21 wed, 00:16:48
ありがちな感慨
高橋孝次
ぼくには少しおしゃべりが過ぎたようだ。
雪は白いし、触れれば冷たい。
そんな事だけでぼくらは生きていられたはずだ。
これまでぼくが長い間かけて並べたてた理屈や哲学が、
もし万が一、真実であったとしても、
本当のことは本当過ぎるから、
やっぱり涙がにじんでくる。
世界に溢れてる嘘がどんなに人を傷つけても、
本当の事より嘘は優しい。
雪の降り出した故郷の細道を歩きながら、
ぼくはそんな事を考えた。
古い友人と再会した。
何年振りだろう、遠い冬の匂いがする。
彼は立派な社会人になっていた。
よく聴いたレコードの話や同級生の話、変わらない模型屋の話、
不思議なくらい昔の事しか話さなかった。
英国紳士のようになった彼のしゃべる言葉は
どうも鼻につくし、空々しい。
親友だった二人の思い出に誰かが土足で踏み込んだような、
悲しい苛立ちだったように思う。
でもそう考えると、
昔より幾らか身なりも清潔になっただろうぼくを見て、
彼も同じ事を思ったのかもしれない。
ぼくらだけの、ぼくらしか知らない思い出は誰のものになったんだろう。
自分たちの思い出にも土足でしか入れないのか、
急に所在無さを感じて居たたまれなくなったぼくは、
別れの挨拶もほどほどに、足早にその場から逃げ出してしまった。
そうすると歩き慣れた街並みもなんだか嘘寒く見えて、
胸がウッと苦しくなったかと思うと、
ぼくはまるで知らない街に立っていた。
そしてぼくはこの知らない街にたった一人きりだったんだ。
それは真っ白い雪が真っ赤な太陽を吸い込んだ夕間暮れの頃のこと。
夜さえ来れば…。そう思った。
これは2年程前の冬の日付が付いた、
ぼくの大学ノートに書き込まれていたお話だ。
本当の事の方が嘘臭い、そういうことだってあると
2年前の僕は言いたかったんだろうか。
どこにでもいる大人になりたくない子供だったんだろうか。
これを書いた「ぼく」と今のぼくの違いがあるとするなら、
ぼくは「知らない街」を一つ、「歩き慣れた街並み」にした。
今でもぼくは一人ぼっちなのか、それは別として。
それだけの話だ。
012
2001/11/11 sun, 01:10:04
書けない理由
西田稼頭豊
船橋の北本町という所に今、僕は住んでいる。
ここ最近は修士論文なる奇怪なものを書かなければならず、
たいてい家にいるため、知らず知らずのうちにご近所と
親しくなってしまった。といってもたいていが道で擦れ違う時に
挨拶をするくらいなのだが、しかしそのなかでも斜向かいに住んでいる
松井さんという今年35歳になる若奥様とは、
どういうわけか立ち話をするようになった。
僕と松井さんはよくゴミ捨て日の朝なんかに、収集所の前にたち
小一時間くらい話をする。話の内容は近所の噂から世界情勢まで幅広い。
そんな或る日、松井さんはこんなことを言い始めた。
「最近さぁ、うちの旦那、どんどん太ってきちゃって・・・。」
「はあ。」よくある主婦のボヤキだと僕は思っていた。
「結婚した時なんか、スタイルよくて筋肉質で、今でいうと、ほら
ケインコスギみたいな感じだったのにさ、時間が経つにつれてぶくぶく
太っていっちゃって、まだ筋肉でごまかしきれた時はよかったんだけど、
もう最近は単なるデブなのよねぇ・・・。」松井さんはため息をつく。
「それはきっと、松井さんの手料理がおいしいからですよ。」
と僕は右頬が引きつるような合いの手を入れた。
「そうなのかなぁ、あたしさ、きっともうあたしに女を感じてないんだと思うのよ。」
「オンナですか・・。」
「そうよ、だからさ、あんなにぶくぶく太っていくのよ。好きな女が目の前にいたらもっと気合いれると思わない?」
「そりゃそうかもしれないですけど、なんていうのかな、安心してるんですよ。そう、きっとそうですよ。すごくいい関係じゃないですか、うらやましいなぁ。」
今度は左頬が引きつった。
「安心ねぇ。でもそうだとしてもなんだか不満なのよね。こうなったら浮気でもしてやろうかしら。」
そう松井さんは言うと、ちらりと僕の方を見た。
あらっ?なんだか変な方向に話がいってる。
そういえば今日の松井さんは季節はずれのミニスカートに、タイトなハイネックのセーターを着ている。
早朝にゴミ捨てに来た主婦にはとうてい思えない。
よく見るといつもはしていない化粧までしているではないか。
僕の視線に気づいたのか松井さんは右手で髪の毛をそれとなくかきあげた。
ほのかにシャンプーの香りがする。
「いや、駄目ですよ、浮気なんて。旦那さんに悪いし、松井さんだって、絶対後悔しますよ。」
と僕は強調しながら言った。僕の勘違いならいいが、
もしかしたら、松井さんは僕を狙ってる。
しかし僕はただでさえ混乱している頭にこれ以上混乱をもたらす事件を抱え込みたくなかった。静かにただ修士論文だけを書く生活を送りたいのだ。
松井さん、嘘だろ、嘘だといってくれと哀願する目で僕は松井さんを見た。
「冗談よ、冗談。ははは、西田君、もしかしてちょっと驚いた?自分が誘われてんのかなぁなんて思ったんじゃない?」
松井さんは意地が悪い。僕はすこし赤くなっているのを感じながら、
そんなことないですよ、と呟いた。
「ところで、どうなのよ、あの、なんだっけ、就職論文の方は?」
きっと修士論文のことだ。
「ぼちぼちですね、なんだか行き詰まっちゃって。どうしようか悩んでるんですよ。」
「そう、あんまり考えるとたまる、・・に、煮詰まっちゃうからねぇ。たまには、抜かな、・・い、息抜きしなきゃ駄目よぉ。」
フロイトは偉大だ。言い間違いは人間の無意識を表象する、
そうですよね、フロイト先生。
松井さん、あなたの無意識には僕は負けませんよ。
と、僕はとっさに嘘をついた。
「そうですね、今日くらい彼女に会いに行こうかな。」
「あら、西田君、彼女なんていたの?」
「ええ。」
「そうなんだ、こっちには全然来ないのね、あたし、西田君のこと、こう言っちゃ悪いけど、孤独を愛する文学オタクなのかと思ってたわ。そう、彼女いるんだ。あたし、見てみたいなぁ。そうだ、なんだったら今度その彼女と三人であたしの家でお茶でも飲まない?昼間、あたし、暇だから。」
そう言って松井さんはにやりと笑った。もしかして嘘が見破られてしまったのだろか・・。いや、そんなことはない。
「そうですね、今度言っておきますよ。」と僕は自然を装って言った。
それ以来、松井さんは僕に会うたびに彼女のことを聞く。僕もついつい嘘が重なり、僕と松井さんとのなかでは、彼女は深津絵里似の25歳の銀行員で、名古屋出身のういろう好きで、現在は吉祥寺に住んでおり、趣味が買い物と寝ること、好きなミュージシャンがスガシカオ、愛読書がカール・マルクス『ドイツ・イデオロギー』で、額には幼稚園の時転んでつけた傷があり、緊張すると上唇をぺろりと舐める癖をもち、マイブームがアロマテラピーで、尊敬する人物が聖徳太子と坂本竜馬、父親はバブル期に一儲けした不動産屋で、母親はその昔新宿でホステスをしていたことがあり、弟がドラゴンボールを探す旅にでかけていることになっている。
僕にはなんだか嘘を重ねる度に松井さんの術中に嵌っていくような気がしてならない。そしてありもしない彼女の人物造形を考えるうちに僕の修士論文は進まないのだ。
こうなったら、本当に、そんな彼女を、見つけるしか、ない・・。
011
2001/11/06 tue, 00:59:48
マニアのためのブックレビュー
妖怪バカ
妖怪バカです。妖怪しか頭の中にありません。そこで、今回は私のような妖怪マニアのために、そして妖怪マニアになりたい方への書評とシャレこみました。関心のない方は温かい目で見てくださいね。
さて、妖怪の本といっても色々です。なので、今回は(って次回があるわけではありませんが…)妖怪モノを扱ったマンガです。「これを知らなきゃマニアじゃない!」という逸品から、「あ、これなら読んだことがある」という初級レベルのものまで、一挙に後悔であります。もとい、公開であります。
では、さっそくはじめていきましょう。
○岡野玲子・夢枕獏『陰陽師』1巻〜、スコラ
おおっと、いきなり王道かい! ま、検索エンジンに引っかかるためにも載せましょう。言わずとしれた安倍晴明を扱ったマンガですね。映画にもなってますんで知らない方はいませんよね? 式神や鬼といった、平安時代に跳梁跋扈していた妖怪どもが描かれております。ふつう、陰陽師モノは陰陽道の説明や使用法がウソなものが多いなか、この作品はわりと忠実になっております。
でも、安倍清明というと私は岩崎陽子『王都妖奇譚』の方が印象強いかも。なにしろこっちの晴明は超美形のサラサラヘアーなんだから。
○高田裕三『トリツキくん』全1巻、竹書房、1991
これならどうだ! 『3×3EYES』で一躍有名になった高田裕三が描く幽霊モノです。といってもお話は麻雀。だから出版社が竹書房なのか…。この人は幽霊とか妖怪とかいう怪異モノが好きなんでしょうかね? そういえば『碧奇魂ブルーシード』も竹書房でしたっけ。
○石川優吾・荒井涼助『童〈タンキー〉乱』全6巻、集英社、1990
台湾などでは神や精霊を自分の肉体に宿らせる憑坐(よりまし)のことを「タンキー」と呼ぶんだそうです。この作品はそんなタンキーの素質を持つ少年が活躍する姿を描きます。ちょっと気味悪いシーンなんかがあって、敬遠する人もいるかもしれん。
○
奥瀬早紀(奥瀬サキ)『低俗霊狩り』全3巻、白泉社、1987
なぜが根強い人気を持つ作家であります奥瀬サキのデビュー作(多分…)。ちょっぴりエッチでコミカルな感じに描いているあたりが人気の秘訣かもね。低級霊を専門に退治する女性のお話。まだまだ続くはずだったんですが、掲載雑誌がつぶれてしまったために、あえなく終了。この方、怪異モノしか描いていないような気がしますな、あと、やたら未完が多い。現在は『コックリさんが通る』(小学館)という作品を連載してます。
○士貴智志『神・風』1巻〜、講談社(アフタヌーン)、1998
絵は綺麗なんだけど、どうも話の筋が見えないマンガ。江戸時代の『絵本百物語』という本に描かれている妖怪が描かれています。詳しく見てないからよう分からん。
○高橋留美子『犬夜叉』1巻〜、小学館
『うる星やつら』全34巻、小学館
『らんま1/2』全38巻、小学館
ぜんぜんマニアじゃないですね。でも妖怪マンガっていったらこの人もかなり描いているんですよね。『うる星やつら』には「こたつネコ」なんて妖怪っぽいものも出ていましたし。この他にも、『人魚の森』『人魚の傷』という人魚を扱った作品を1冊ずつ出してます。
○たがみよしひさ『妖怪戦記』1巻〜、徳間書店
妖怪退治のお話。3巻まで出ているのはたしかですが、それ以降を見かけないということは、打ちきられたのかも。この方、登場する妖怪にやたらと「乳房」をつけたがる。おまえはオッパイ星人か!? これもやっぱり妖怪退治モノ…
○手塚治虫『どろろ』全3巻、秋田文庫、1994
戦国時代を舞台に、百鬼丸とどろろが妖怪退治に活躍する作品。巨星・手塚治虫もまた妖怪モノを多く描いております。この作品のほかにも妖怪モノとしては『魔法大王』『妖怪探偵団』(あ、これは題名だけね。マンガに妖怪は出てきません)『ブッキラによろしく!』とか描いてます。それに、『火の鳥』もよくよく考えれば不死鳥を扱っているんだから、この系列に入るかな。
○徳弘正也『水のともだちカッパーマン』1巻〜、集英社、1996
河童が主人公のギャグマンガ。この方のギャグは好きなんですが、本作品はどうも不調気味。連載もたしかすぐに終わったと思います。
○幻超二『大唐騎士』全1巻、講談社、1995
この方は成人向けのマンガを描く方なのですが、本作品はエッチなし一般向けの妖怪マンガです。その名の通り中国が舞台(最終的には日本になりますが)。美女に化けた九尾の狐と、それに運命を翻弄される西洋の剣士を描く。
○夢来鳥ねむ『物の怪らんちき戦争』1巻〜、角川書店、1991
「トイレの花子さん」「夜中に歩く二宮尊徳像」「赤いマント」といった学校の怪談に登場する面々がキャラとなって登場します。はじめはギャグ調の学園モノだったのですが、最近シリアスになってます。
○寺沢大介『WARASHI』全4巻、講談社、1990
題名のとおり座敷童子(ざしきわらし)が主人公。記憶が定かではないが、たしか実写版でテレビ放送もされたと思う。『ミスター味っ子』や『将太の寿司』といいた料理マンガ知られる寺沢大介が妖怪マンガに挑んだ作品。でもやっぱり妖怪退治モノなっているのはマンネリだねぇ。
○垣野内成美『吸血姫美夕』全1巻、秋田書店、1989
「あぁそういえば、あったねぇ」という作品。小説やアニメにもなり、マンガもその後シリーズを連発するほどでした。主人公は吸血鬼の少女で、妖怪(なのかなぁ)を退治して行きます。
○魔夜峰央『妖怪始末人トラウマ!!』1巻〜、白泉社、1986
『妖怪始末人トラ・貧!!』1巻〜、秋田書店
「パタリロ」で有名な魔夜峰央が描く妖怪コメディー。手元にないため何巻までかは不明です。ちなみに、文庫化されていますのでお手軽に読めますよ。他にも『妖怪缶詰』というのも出しております。
○私屋カヲル『おネコさまが来た』1巻〜、小学館、1994
少女ギャグマンガ。おネコさまという、願いを一つだけ叶えてくれる神様が巻き起こすどたばたギャグです。たぶんもう完結していると思う。
○藤田和日郎『うしおととら』全33巻、外伝1巻、小学館、1990
ここ最近の妖怪マンガで群を抜いているものといえばこれでしょう。獣の槍を持つ少年が「とら」という名の妖怪とともに、九尾の狐を倒すというお話。熱血ヒーローモノであります。
いやぁ、ざっと挙げましたがいかがでしょう? 妖怪モノとして思うがままに挙げたのですが、あらためて見直すと「本当にそうかぁ?」と思ってしまうようなものがありますね。だって、『吸血姫美夕』『低俗霊狩り』とかは「妖怪」っていう単語すら出てこないし。でも、これを妖怪マンガと呼んでしまう。それはきっと私だけではないと思うんだけどなぁ。そうなると、「妖怪ってなんなんだろう?」って考えてしまうよね。民俗学とかでいろいろ定義はされているけれど、あれはなんか違うと思う。
柳田国男っていうエライ学者さんは次のように定義している。
1、 妖怪は特定の場所に出現する
2、
幽霊は特定の相手なのに、妖怪は相手を選ばないで出現する
3、
幽霊が夜中に出るのに妖怪は時間を選ばない
4、 神が零落した存在
たしかにそうかもしれない。でも、今現在、私たちが思い描く妖怪ってなんだろう? 水木しげるの描いた妖怪や上に列挙したマンガのなかの妖怪なんじゃない? だとすると柳田さんの定義ってぜんぜん違うんだよなぁ。
こんなこと書くと「柳田の定義は民俗社会における定義であって、マンガなどの架空の世界における妖怪の定義には当てはまらない」って言われちゃいそう。
でも、実際問題としてはどうでしょう? 架空の世界と現実の世界ってそう簡単にすっぱりと割り切れるものじゃないと思う。互いが影響しあっている。いや、もっといえばその境目なんか曖昧で、グラデーションみたいなんじゃなかろうか。とくにインターネットなんかが普及している今は、なにがバーチャルな世界で、なにがリアルな世界なのか、すごく区別が難しくなっていると思う。
まぁ、さすがに『ゲゲゲの鬼太郎』見て「目玉のオヤジ」が実際にいると確信する人は少ないかも。でも、ひょっとしたらって思う人は多いと思うんだなぁ。もっと身近な話にしてみよう。夜中にトイレに行ったとき背後に気配がしてぞっとする。そのとき思い描くのはついさっき見ていた『本当にあった怖い話』に出てきた怨霊じゃない? あるいは子供のころに絵本で読んだ鬼婆なんじゃない?
妖怪や幽霊っていうのは「出して」って言われて「はいお待たせしましたぁ」って出せるもんじゃない。あくまでも観念上の生物だと思っている。べつにそれは存在を否定しているわけじゃない。おいそれと手のひらに乗せて見せびらかすことができないって言ってるだけ。そんな連中の姿形なんていうのは、やぱりイメージするしかない。で、その手助けをしているのが、もっと言えば多いに影響を与えているのがマンガとかイラストとかの「絵」だと思うんだよね。
妖怪のことばっかり考えて、研究文献とか調べていると、この「絵」についての扱いがすごく少ない。民俗学やっている人はすぐ昔話や民話とかに走っちゃうし、文学やっている人はやたらと『今昔物語集』とか『古事記』とかいう古い文献に行っちゃう。やってない人がいないとまでは言わないけれど、やっぱり少ない。もっとさぁ、「絵」からアプローチしてくれる研究者いないかなぁ……
おや、妖怪マンガのレビューからえらく話が飛んじゃいましたね。失敬。それでは皆さん、またどこぞでお会いしましょう、アデュ――!